不思議な森の彩り

森の奥深く、朽ち木を青く染めるものの正体はロクショウグサレキン(緑青腐菌)というきのこです。朽ちた木々に発生するこの菌は、まるで青緑の絵の具で木を彩るかのようです。

しかし、この緑青腐菌には“もどき”も存在します。ロクショウグサレキンなのか、それとロクショウグサレキンモドキなのか見分けるのは難しい場合があります。この写真のように子実体(キノコの部分)が確認できない場合、正直なところどちらなのか判断ができません。

通常、私たちが見ているきのこは“子実体”と呼ばれる部分で、ここで胞子を作り新たな世代を育む役割を果たします。ロクショウグサレキンの子実体は直径5mmほどの小さなもので、緑青色の大きなかさぶたのような、はたまたお椀のような形をしています。

もどきかどうかを見分けるための方法は、子実体の裏側を観察してみることです。柄が中心についているものが“ロクショウグサレキン”であり、偏心についているものが“ロクショウグサレキンモドキ”とされています。要するに柄のつき方がポイントです。

また、ロクショウグサレキンは外側の細胞から毛を生じるため、やや白く見える場合もあるとのことです。正確な判断には顕微鏡が必要ですが判定の目安のひとつになりそうです。

ロクショウグサレキンは染料としても使われることがあります。草木染で青く染められる植物というのも実はあまり多くありません。ロクショウグサレキンの場合は草木染ではなくこの場合きのこ染めという呼び方になるのかもしれませんね。

青く染められる植物は藍やクサギ、ツユクサなどで、それぞれ特徴が異なります。藍は発酵が必要で染められたものは耐久性が上がり虫除けの効能があります。クサギも薄い青色に染まりますが退色が藍より早いそうです。ツユクサは大花の栽培変種に、オオボウシバナ(青花)というものがあり、水に晒すと全て溶出してしまう特徴を持っています。その特徴を活かし友禅染めなどの下絵描きに利用されています。

青色に染まる植物でもいろいろな特徴を持っていて驚きます。ロクショウグサレキンはどんな特徴を持っていて、どんな色に染まるのでしょうか?とても気になりますね。

森の木を土に返しながら緑青に染めるロクショウグサレキン、綺麗な色で持ち帰りたくなりますが十和田八幡平国立公園では観察だけにしましょう。見たものはそのままに。森の中で見る緑青が一番美しい光景です。

木滝 奈央/Kitaki Nao 

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