十和田湖の水はどこから?
十和田湖は奥羽山脈の中にあり、周りが山に囲まれた山上のカルデラ湖で、周囲46km、最深部326.8m、面積61.1㎢、貯水量 4.19 km³、湖面標高400mと非常に大きく深い湖です。そして、外輪山で一番高い山は十和田山で1054m。周りの山々も約1,000m付近で、植生はブナが主体で構成されており緑豊かな森が十和田湖を囲むように色濃く残っています。
さて、このようにぐるりと山々に囲まれた大きく深い地形に蓄えられた十和田湖の水は、いったいどこからくるのでしょう?
答えは、空から降ってくる雨です。
雨雲がもたらす大量の雨粒が湖に降り注ぐだけでなく、外輪山にも降り注ぎます。
樹冠のブナの葉が雨粒を受け取ると、葉から枝、そして幹へと合体しながら水路がつくられゆっくりと流れていきます。(樹幹流)
枝や幹にはコケや地衣類、菌類などのいきものがいて、雨粒はそのいきものたちに触れたり吸収されたりしながら地面へと浸透していきます。たくさんの落ち葉が敷き詰められている地面は、何年もの間をかけて分解されている様々な落ち葉の階層(腐葉土)からできていて、浸透した水はフィルターの役割を持つこの土壌の中をゆっくりと流れていきます。
地下では砂礫層があり浸透した水が集まると、次第に川となって地下の中を流れていきます。(伏流水)
細かい砂や石でできている砂礫層は濾過フィルターの役割をもっていますので、水は不純物を取り除かれながら流れていきます。迷路のように幾つもある地下水路の先は、地上へと繋がっており急峻な谷地形の中を流れる沢となって、さらに周りの支流と合流して水量を増やして流れていきます。
沢は倒木や岩などの障害物や地形の変化が激しく、水路も蛇行したり落差があったり分かれたりと複雑な水流を作ります。
早い流れや遅い流れ、反転流や止水などに分かれたり、波飛沫で周りに飛び散るなど、ここでも水はいくつもの路を辿っていきます。また、野鳥や動物などの飲み水にも利用され排泄物として姿を変えまた森に戻ったりもします。
こうして、空から降ったてきた一滴の雨は長い時間をかけて山から湖へ純度の高い水となって十和田湖へ辿り着くのです。
しかし、水の旅もこれで終わりではありません。
十和田湖の水は奥入瀬渓流を経て八甲田から流れてくる蔦川と合流し奥入瀬川と名称を変えて十和田市街地の南側を流れ、上北郡おいらせ町と八戸市の境界で太平洋に注いでいます。
流路延長約70kmの2級河川で、上流域では渓谷の中を流れる渓流となり、中流域では市街地や田畑の側を瀬と淵を繰り返しながら蛇行し徐々に大きくなり、下流域の河口周辺では大河となるなど、異なる環境の中を流れて海に注いでいます。そして、人の営みにも深く関わっており、観光放水や灌漑用水、水力発電などにも利用されています。
こうして、長い時間をかけてようやく海へたどり着いた水は、さらに海洋を彷徨いまた長い時間をかけて旅を続け、やがて雲となり十和田湖へ戻ってくるのです。
普段、何気なく触れている十和田湖の水を意識してみると、空から生まれたばかりの水滴からはじまる長い水の旅があり、何度も寄り道をしたり、そのフィールドのあらゆるものに触れたりしながら育まれて成長を続け、山から海へ、海から山へ循環している、とても壮大なストーリーが眠る自然のエッセンスそのものなのです。
村上 周平 / Murakami Shuhei
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