ホソツクシタケ

十和田湖畔の森でホオノキの果実(袋果)を見つけました。

ホオノキは樹高が20m以上にもなる落葉高木で葉も20〜50cmにもなる子どもの顔が隠れるくらいの大きな葉っぱをつけます。また、モクレンの仲間なので花も大型で、見た目は松ぼっくりのような形状の赤色の果実をつけます。秋の落葉期の林床は、ホオノキの葉がよく目立ちます。

この画像の黒く変色したホオノキの果実の中は、ひとつも種子がなく、すでに散布したか鳥やネズミに食べられてしまったのでしょう。どうやら昨年つけたと思われる果実を見つけたわけなのですが、よく見るとこの果実から、先端部は黄色くその下部は白っぽく粉状に噴いて見え迂曲している細長い針状のものがたくさん出ているに気がつきます。

この細長い針状のものはホオノキの一部ではなく、別のいきもので、分類すると菌類になります。いわゆるキノコ(子実体)と呼ばれる仲間になります。ホオノキの果実からキノコが生えているということですね。

このキノコは「ホソツクシタケ」(Xylaria magnoliae J.D. Rogers)と呼ばれています。
見た目どおりに食用不可のキノコです。
漢字で書くと「細土筆茸」と書きます。「土筆」の漢字の由来はツクシ(スギナ)の胞子体の姿形が土に刺した筆のように見えることから「土筆」と当てられたようで、ホソツクシタケの和名はこの見た目の特徴を捉えた名前ということがうかがえます。

さて、このキノコの特徴ですが、白っぽく見えている部分は分生子(菌糸の一部が変化した無性胞子) といわれる菌糸の一部で、成熟するにつれて子嚢殻が形成され黒く粒状となります。そして、ここから胞子が飛散します。

春に発生した幼菌時は白く、夏から秋にかけて成菌したものは黒化するということですので、このキノコはこれから成熟していくようです。

また、生育環境も限られており、地面や倒木から発生するのではなく、ホオノキの果実からしか発生しません。この他にもホソツクシタケの近縁種では、ブナの殻斗などやっぱり限られた環境でしか発生しないタイプのようで、このキノコの生きかたに「なぜ?」と疑問に思ってしまいます。

なんともユニークな生き方や姿をしているホソツクシタケですが、見た目の印象は不気味でホラーのように感じながらも妖しさの中の美しさもあり、私の中で出会ったキノコの中ではインパクト大なお気に入りのキノコなのです。

村上 周平 / Murakami Shuhei

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